よみもの📚その6

やまーの処女作!?
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『夜をこえて、私になる』

第八章 ひとりになりたい夜

春休みの夜は静かだ。
外の風の音だけが、部屋の中の時間をゆっくりと進めていた。

沙希は、机の上にノートを開いたまま、ぼんやりスマートフォンのSNSの画面を見ていた。
映っているのは、可愛い赤ちゃんの格好に身を包んだ女性の画像。淡いピンク色のおしゃぶり、ぬいぐるみの模様がついた哺乳瓶、肌着のようなロンパースパジャマ、そして不自然に大きなおしりのシルエット。

「……なんで、こんなの見てるんだろう、私」

つぶやいた声が、部屋にやさしく吸い込まれていった。

おねしょはほとんどなくなった。
それでも夜になると、おむつを履いて眠っていた。
安心する。心が落ち着く。なにより――戻ってこれる場所のように感じる

「……赤ちゃんみたいだよね、ほんと」

それは、冷ややかな言葉ではなかった。
ただ、事実としてそう思った。
でも、そこにほんの少し、甘さと救いがあった。

(赤ちゃんって、泣いたって、ぐずったって、、もちろんおむつにおもらししちゃっても誰にも責められない)

ふと、そんな言葉が浮かんだ。

沙希はベッドに腰を下ろし、足元の引き出しから柔らかい布地のパジャマを取り出した。
ネットで注文したばかりの「子ども用ロンパース」。高校生の体には少し小さめだけれど、ストレッチ素材で優しくフィットする。

着替えてみる。
股のスナップをパチパチと留めるたびに、身体中がほぐれていくような気がした。

(誰にも見せない。ひとりきりの時間だけ)

胸元までついたスタイも、きゅっと巻いてみた。
哺乳瓶は買っていないけど、哺乳瓶に似た形の水筒を手にして、そっと口をつける。

口元が温かくて、ほっとした。

「……ああ、こういうのが欲しかったんだ、私」

それは、子どもになりたいのではなかった。
“甘えてもいい”っていう許しが、欲しかったのだ。

* * *

そのまま、枕元のノートを開く。
誰にも見せたことのないページに、細い文字でつづる。

「今日、私はおむつを履いたまま、ロンパースを着ました。
 とても安心しました。
 お姉さんになろうと頑張る自分も、こうして甘えたがる自分も、どちらも“私”です。
 どちらかを否定しなくても、いいのかもしれないと思いました。」

ノートの上に涙が一粒、ぽとりと落ちた。
涙の意味は、もう沙希にもわからなかった。
けれどそれでよかった。

答えは、急がなくていい。

夜が、やさしく包んでくれていた。

やまー
やまー

ぁぁああぁぁ…
良いです…
とっても良いです

まーや
まーや

お部屋でこんな独りぼっち、ガマンできないよぉ
素敵なお世話さんと咲希ちゃんが出会えますようにっ

やまー
やまー

おひざだっこぉぉぉ

まーや
まーや

(ん…?壊れた?)

やまー
やまー

ばぶちゃんって本当にかわいいよなぁ…(語彙力なし)

まーや
まーや

まーやが沙希ちゃんに、SNSとかで素敵なパートナーに出会えるかもしれないって、伝えてくる✨

やまー
やまー

ということは次回…
オラ、ワクワクすっぞ!

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