『夜をこえて、私になる』
第十一章 わたしが選ぶ、わたしのかたち
スマホの画面は、まだ冷たくて怖かった。
あのときの言葉たちが、今も指先の奥に残っている。
「ほんとに女の子? こんな趣味、気持ち悪いよ笑」
「見てると吐き気する。病院行けば?」
「バラされたくなければやめとけよ」
いまだに鋭い棘が、心の奥に残って私を苦しくさせる。
やっぱり私がおかしいのかな・・・。
数日間は、おむつを履かなかった。いや履けなくなっていた。
心にぽっかりと穴が空き、大切な何かを失った気持ちになっていた。
私、そもそも何も失ってなんかないのにね。それでもやっぱり寂しいな
* * *
しばらく、アカウントを開けなかった。
それでも、気になってしまって――四日ぶりに、通知欄をそっと開いた。
リプライがいくつか来ていた。
その中に、ひとつだけ――やけに静かで、優しい言葉があった。
「とても大切な気持ちなんだね。ここで出会えたこと、うれしいです」
「よかったら、また安心できるときに投稿してほしいな。」
その文のなかに、「好き」も「かわいい」もなかった。
だけど、それが逆に心に深く響いた。
(……誰かが、ちゃんと“気持ち”を見てくれた)
沙希は思いきって、DMを開いた。
「コメントありがとうございます。実は少し怖い思いをして、投稿を止めていました。
でも、あなたの言葉を見て、もう少しだけここにいてもいいかなと思いました」
送信ボタンを押してしばらくすると、返事が届いた。
「無理しないで。でも、あなたの言葉はとても静かで、やさしいです。
“好き”でいることが苦しい日も、私は応援しています。気軽にまた投稿して欲しいなって思っています。」
名前も、性別も、何もわからない。
けれど、ただの文字のやりとりなのに、こんなに安心できるのが不思議だった。
それから、ゆっくりとDMを交わす日々が始まった。
好きなぬいぐるみの話。落ち込んだときに聴く音楽。
「今日はおむつ履いてますか?笑」なんて、冗談みたいな軽さで尋ねてくることもあった。
笑った。ほんとうに、久しぶりに。
(この人と、もっと話してみたい)
その夜に沙希は、久しぶりにおむつに脚を通した。
下腹部に広がる柔らかな安心感は、自分の居場所のように思えて心が穏やかな気持ちになっていく。
そしてわざとおもらしもしてみた。甘えたい気持ちが以前よりも一層強くなっているのを感じた。
(こんな時、誰かに甘えれたらな・・・)
その夜はおむつが濡れたそのまま、布団にくるまって眠ってしまった。
眠りに落ちるその微睡みの中
画面越しのその人――アカウント名「mofu_mofu」が、だんだん“誰か”になっていく。
正体はわからないままでいい、とその時は思っていた。
そしてある夜のやりとりの中で、こんな言葉が届いた。
「よかったら、今度一緒にぬいぐるみのお店でも見に行きませんか?」
沙希の指が止まった。
(……会う、って……)
現実とつながること。
名前も顔も、知られてしまうかもしれない。
でも――
(この人になら、見られても、会っても、いいのかもしれない)
心のどこかで、静かにそう思っていた。
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SNSには一定数、心無い事を言ってくる人がいるのは仕方ない現実。
でも、自分に合った優しい人が一定数存在するのもまた事実!
とはいえ傷付いた心を癒してくれる場所がきっと存在する😌

傷付いた沙希ちゃんに良き人が現れますように!

人に会うって緊張するし、怖いことでもあるよね。特に界隈の特性上ってのもあるだろうけれどもさ。
いきなり1対1ってのはハードルが高いよね。信頼関係とか、安心感とかは年月をかけて築いていくものだからね。

特に女の子へ声をかける時は、いきなり会いましょうは怖いのよっ
信頼関係とか置き去りにして、全部ぶっ飛ばしちゃダメよ。
会う前のやり取りが丁寧じゃないのに、会ってから丁寧に扱ってくれるなんて思えないもんっ

まぁそうかもね笑
人に会うってことをオススメはしているけれど、間違った積極性で進むんじゃなくて、他者貢献のような気持ちで考えれば、お互いに安心して会えるんじゃないかなって思うよ😊
人と会うってことは、もちろん相手がいる(1人じゃない)からね!
